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浅田信一
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芸能界や音楽界、さらには映画やお芝居の世界、そのそれぞれのシーンで旬の表現者たちが脚光を浴び、眩い輝きを放っている。それはデビューという夢を掴んだばかりの新人であったり、実力をつけてきた成長株の若手であったり、脂の乗った中堅であったり、いぶし銀のベテランであったり。そんな今一番注目したいアーティストを紹介するコーナー「ATTENTION!」。今回は、今年
デビュー10周年を迎えたシンガーソングライターの浅田信一を紹介しよう!
1969年、静岡県浜松市生まれ。1995年にSMILEのヴォーカルとしてデビューし、1stシングルの「明日の行方」がスマッシュヒットを記録する。その後も確実にフォロアーを増やしていくが、2000年12月に活動休止。
以降はソロアーティストとしてライブ活動や音源制作を続け、CHEMISTRYやKinKi Kidsへの歌詞提供やV6への曲提供なども行なっている。
…と、簡単な「プロフィール」を書くならこんなものだろう。しかし、アーティストである浅田信一を語るには、そういったデータ的なことよりも作品で語るのが一番。デビュー10周年に当たる今年、初のセルフカバーアルバム『モアベター・スマイル』がリリースされたので、その作品を見ていきたい。
まず、このアルバムに収録されているのは、SMILE時代の楽曲ばかり。つまり、1995〜2000年の5年間のものでしかなく、これではデビュー10周年を記念するアイテムとしてはどうかと思うかもしれない。しかし、本作は単なるベスト盤ではないのだ。収録曲全てに新たなアレンジが施され、もちろん新録音されている。さらに、ムーンライダースの白井良明を始め、ザ・コレクターズの古市コータローや東京スカパラダイスオーケストラの沖
祐市などの豪華なゲスト陣が参加しているのだが、それこそ彼の10年の活動が導いた縁であり、彼らと作り上げたモノからは浅田信一の10年の軌跡が見えてくるのである。また、彼にとって掛け替えのないバンドであるSMILE。その楽曲をカバーするタイミングが今なのも、やはり“デビュー10年周年”という区切りだからだ。
そして、強者揃いのゲスト陣とコラボレートした楽曲なのだが、そのアプローチは濃密なアコースティックであったり、繊細なストリングスをフィーチャーしたものであったり、グルービーなバンドサウンドであったりとバリエーションも様々で、節々にルーツミュージックが見え隠れしていたSMILEのバージョンとは違う角度から楽曲を輝かせている。夜の空気を織り込んだような浮遊感のあるトラックでしっとりと聴かせる「MAGIC
CARPET RIDE」やピアノとアコーディオンをバックにCHEMISTRYの堂珍嘉邦とデュエットした「IN EVERY PLACE」などは、浅田の温もりのある低音ボイスの心地よさを一層引き立てていて、改めて彼の紡ぐメロディーの美しさと強さ、歌詞における詩的な言葉の妙を痛感した。また、バックのサウンドがまったくオリジナルと変わったことによって、SMILEでやろうとしていたことも垣間見れる。
このセルフカバーアルバムは、彼の中でSMILEというバンドの存在を昇華させたとも言える。新しい1歩を踏み出すために作っておかなければならなかった作品だったのだ。また、ここでのセッションがアプローチの幅を広げ、今後さらに自由なスタンスで音楽と向かい合っていくことだろう。そういう意味でも、今後のアクションがどんなものになるのかが今から楽しみである。
from 『GooDol Vol.02』
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