R.E.C.
HOMEへ 連載コラム ライブレポート ディスクレビュー BBS Editor's Voice About
*
THE イナズマ戦隊のニューアルバム『為さねば成らぬIII枚目』が完成した。“上京して3年、3枚目のアルバム”だけにバンドにとって1つの節目になる作品であることには違いないのだが、ボーカルの上中丈弥曰くレコーディングに入る前の本人達には特にそういう気持ちはなかったようだ。しかし、そのタイトルといい、ここに詰まっているシェイプされたバンドサウンドといい、いつも以上に熱い歌詞といい、バンドがさらなるヒストリーを刻んでいく上で1つの分岐点となるアルバムであることは必至である。そこで本作について、いろいろと突っ込んで上中に話を聞いた。



この3年はクソガキから
大人になった3年でした



−今回のアルバム『為さねば成らぬIII枚目』は“上京して3年、3枚目のアルバム”ということなのですが、まず上京してからの3年はどんな3年でしたか。

上中丈弥(以下、上中):今までの人生の中で一番いろんなことがあったし、クソガキから大人になった3年でしたね。

−北海道でやってた頃とはバンド内の意識も変わりました?

上中:全然、変わりました。ライブにしても今までは自己満足だったというか、自分が汗をかいて、ワーキャーってやって、それで終わってたんですけど、いわゆる商売になったわけだから、お客さんを楽しませて、感動させて、自分たちも心に何かをもらうというものに変わりましたね。上京したばかりの頃というのは、とにかく分らないことだらけでしたし、最初は4人でやってきた…それも僕が「イナズマ戦隊、やろうや!」ってみんなを引っ張ってきてたんですけど、上京してそこに突如マネージャーが入ってきたじゃないですか。「お前、何やねん!」って(笑)。イベンターさんが入ってきても「俺らをどこに連れて行くねん!」っていうぐらいに気を張ってたんですよ。だから、みんなが敵に見えてた。

−レコード会社の人に「アルバムではプロデューサーを立てましょう」と言われても「そんなんいらん。俺らは自分でやる!」と言ってたみたいな?

上中:言ってましたよ。1stアルバムの『勝手にロックンロール』を出す時に、それでえらいもめましたからね。今になって思えば、プロデューサーがいなかったら何もできなかったし、周りのみんながイナズマ戦隊を良くしようとしてくれていたのに、僕らは何も分っていなくて、それを自分らで止めていた。この3年でそういうことがいろいろ分ったんで、バンドに対する意識やライブに対する姿勢とかも変ったという感じですね。

−そして、今回の3rdアルバム『為さねば成らぬIII枚目』が完成したわけですが、どんなアルバムを作ろうと思っていましたか。バンドにとって3枚目のアルバムというのは区切りや分岐点だと言われていますが、やはりそういう意識はありました?

上中:区切りや分岐点という意識は全然なかったんですよね。三枚目が区切りになるということを、レコーディングが終わって、周りの人に「いよいよ区切りになる三枚目ですね」って言われて初めて「そうなんや!」って気付いたぐらいです。

−そうなんですか。“為さねば成らぬIII枚目”という、いかにもなタイトルだったから、かなり気合いを入れて作ったんだと思ってましたよ。

上中:だからね、どこに行ってもそういうことを言われるんですよね(笑)。2ndアルバム『馬鹿者よ大志を抱け』を作って、次に「あの夏の日々」というシングルを出した時のバンドの状態がすごく良かったから、そのままの流れでトントントンと作った感じなんですよ。

−では、特に「こんなアルバムにしよう」という気持ちもなく?

上中:今回もプロデューサーが白井良明さんなんですけど、2ndアルバムと「あの夏の日々」を作った時に「イナズマ戦隊はこっちに行くんだろうな」みたいなものが良明さんには見えていたと思うんですよ。だから、そこまで話し合ってないんです。とにかくいい曲を作るっていうことだけを意識してましたね。分かりやすいのがイナズマ戦隊だったりするから、それを聴かせるというか…より多くの人に聴いてもらうんだから、ゴチャゴチャやっても仕方ないというのがあるし、イナズマ戦隊は何をやってもロックになると思うから、曲を作る時もカッコいいとかよりも、いい曲を作るってことだけを考えてました。それでできた曲がロックかロックじゃなかというのは、聴いてくれた人が判断することやし…僕が中学生ぐらいの時にしても「これ、ロックやから聴こう」って選んで聴いたりはしてなかったし、レッド・ツェッペリンはロックだと言われてたけど僕には難しすぎて分らなかったし、ビートルズはロックだと知らなくてもいい歌だから知ってた。だから、「いい曲を作ろう」と思って曲作りに入って、それでいい曲を作ったら、サウンドもシンプルになったという感じですね。

−良明さんの中では、よりシンプルな方向に行くってことが見えていたんでしょうね。

上中:そうでしょうね。良明さんの頭の中は分らないですけど、何か言われても「あっ、そうです。それです」みたいな感じでしたからね。それって、何なんやろ? 僕は忌野清志郎さんやトータス松本さんが好きなんで、清志郎さんやトータスさんが聴いてきた外国の音楽も聴いてきたし、それをまたメンバーにも「これ、ええで」って聴かせていたんですよ。だから、例えば良明さんに「ちょっとレッド・ツェッペリンの要素を入れてみよか」とか言われたら、「それは違う!」ってなったと思うんです。そういう意味では、良明さんが考えてることと、僕らが考えていることは一緒だったと思いますね。良明さんはさすがですよ。


僕らは自由にやったけど
良明さんはかなり頭を使った



−今回のアルバムの音なのですが、いい意味でのドロ臭さを残したままスタイリッシュになったというか、バンドそのものの音が強くなった印象がありました。

上中:4人の音がはっきりと分るようにする…例えばミックスでもそういうふうにしようということは良明さんとも話しましたからね。この4人のキャラがあってこそのイナズマ戦隊なんで、それが見えないのは嫌やし、ボーカルがやたら飛び抜けているのも嫌やなんで。でも、それは意識してじゃなくて、知らないうちにそうなったと思うんですよ。そういうものが自然と音になって出てきているというか。

−鍵盤とかのバンド以外の音も入っているんですけど、それらがバンドの音を引き立てたりもしていますしね。

上中:鍵盤を入れたり、管楽器を入れたりしても、それはあくまでもプラス というか…言ってしまえばライブでは絶対に入らないものだから、それがなくても成立するようなアレンジにしてますね。でも、レコーディングはレコーディングなんで、そこはちょっと派手目にしたという感じです。

−ではレコーディングでも、そういう上モノを意識せずに、いつものように自由にやれた?

上中:そうやって自由にできたのも、良明さんがいて、上モノが乗っても僕ら一人ひとりのキャラがちゃんと見せれるアレンジを考えてくれたからだと思うから、僕らは自由にやらせてもらったけど、良明さんはかなり頭を使ったでしょうね。

−曲調にしても「ガタガタ言いやガッタ」はイナズマ戦隊のロックバカな面が出でいるし、「小さな幸せ」はフォークロックしているんですけど、それもイナズマ戦隊が持っているナイーブな一面なので、そういうところも良明さんがしっかりと引き出してくれたという感じですか。

上中:そうですね。例えば「ガタガタ言いやガッタ」は録り方からして、「一発歌ってOKにしょう!」という感じでしたからね。録る前に良明さんから「“怒り”と“愛”を溜めておいてくれ」って言われてて、それを一気に解放するようにバーって歌ってOKになったという。だから、「ガタガタ言いやガッタ」に関してはライブ感がすごく出ていると思いますね。

 
ページのトップへ
Copyright (C) 2002 R.E.C. All Rights Reserved.