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もっと楽しいものが出てきたら
バンドはヤメてしまうと思う



そのスタンスを象徴することかもしれないのですが、鳴り物入りでメジャー進出したのに、アルバムを3枚作っただけでインディーズに戻りましたよね。メジャーにいれば作品を作る際には製作費が出るし、音楽のことだけを考えていれば良かったのに、インディーズに戻るとバンド以外のことも自分たちでしないといけなくなりますよね。それでも戻ったというのは、やはり自分たちのスタンスでやりたいことができるからですか。

KIBA:そうですね。その頃、テレビの番組でレコード会社も事務所もなくなるっていう崖っぷちのバンドがヒッチハイクで大陸横断とかさせられてたんですけど、僕らはレコード会社も事務所も辞めてしまったところだったんで、「ということは、ウチらは谷底のバンドなのか!?」って思いましたけどね(笑)。でも、自分らでやっていけると思ってたし、とりあえず焦らずに自分らでやれることをやっていこうって。確かに多少は手が足りなかったこともあったと思うし、世間的にはメジャーと契約していることがプロってのがあるんでしょうけど、普通に音楽はできるし、メジャーに行く前も僕らはこれで食べてきたわけだから、インディーズでやってても問題はないかなって。

−インディーズに戻って、まず最初に『絶滅種』という映像作品を発表されましたよね。演出から撮影、編集まですべて自分たちでやっていて、大変そうだけど楽しんでいるなと思ったんですよ。

KIBA:すごいおもしろかったですね。それまでビデオを作ってもらってて、確かに「これは僕にはできない、すごいことや」って僕だけじゃなくて、メンバーも思ってたと思うんですよ。でも、どこかで「僕やったら、こうするやろな」というのは持ってたんで、「だったら、やってみるか!」みたいな感じでしたね。「運動会でお父さんがビデオを撮ったりしてるんやから、俺らにもできるやろ」って。実際にやったら大変でしたけどね(笑)。でも、バンドというのは他から仕事をもらうということは基本的にないわけじゃないですか。「今度はこれをやろう。次はあれをやろう」という感じでやっていく…自分らでライブの日程を決めていったり、音源とか出すものを決めていかないとダメなんで、やりたいことがなくなったら終わるんだと思いますね。やりたくもないのにやっても仕方がないわけですからね。僕は基本的に楽しく生きていきたいんで。

−でも、ガーゴイルがやってきたことは他のバンドと明らかに違いますよね。持ち曲全部をプレイするカウントダウンライブをしたり、バトルガーゴイルと名乗ってMCもアンコールもなしで速い曲だけを演奏するライブを行なったり。

KIBA:それはですね、僕がガーゴイルのファンだからなんですよ。持ち曲を全部やった時も…結成して11年の時で93曲ほどあったんですけど、昔からガーゴイルを観ているファンはどう思ってるか、半年前から観出したファンはどう思ってるかを考えた時に、昔のファンは昔の曲を全部聴いてみたいだろうし、新しくファンになった子も昔の曲は聴いてみたいんじゃないかと。「だったら、一回、全部やってみたらいいんじゃない?」って感じだったんですよ。バトルガーゴイルにしても…もちろんガーゴイルには速くない曲もあるし、バラードが好きだっていうファンもいるけど、ガーゴイルの場合は速い曲がメインなので、「だったら、速い曲ばっかりのライブをやってみてもいいんじゃないかな」って。だから、視点的はそこですね。「こんなガーゴイルを観てみたい」という気持ちと、「こんなことをやりたい」ということの接点を探しているみたいな。

−…にしては、持ち曲全部をプレイしたライブにしても、バトルガーゴイルにしてもかなり自虐的ですよね(笑)。

KIBA:確かに自虐的ですよね(笑)。でも、「やってみたい」という気持ちに勝てないんですよね。やってみたいんだったらやってみてから、それが失敗だったかを判断するというか。やってみたいのにやらずに「それはしんどいからヤメとこ」ってのはないですね。たまにバンドで話し合いをするんですけど、基本的には「それはやりたくない」というのは言っていけないことになっているんですよ。誰かが「こんなことをやりたい」って言った時に、それをやりたくなかったら「だったらこういうことをしたい」って言わないとダメなんです。メンバーは4人いるんですけど、誰かが「こんなことをやりたい」って言った時に、他の3人全員が「おお! それは素晴らしい!」ってなることなんて10個言って1個か2個ぐらいしかないんでね(笑)。カウントダウンで93曲をやるってなった時も、みんな最初は「えー! できたらおもしろいけど…」って(笑)。でも、「できたらおもしろいんやったら、とりあえずやってみよう」ってことで最終的には落ち着いたんです。

−また、普段のライブにしてもスタイルが変りましたよね。最初は作り込んだものをやってましたけど、どんどん自由になっていったというか。

KIBA:それはメンバーが変ったというのが一番大きいですね。バンドというのはメンバーで構成されているものなんで、一人変れば変ってしまう。前にいた人の役割を他の人がやらないといけなくなったり、新しく入って来た人のやりたいことがそこに加わってきたりして、徐々に変っていった感じです。例えば、前にいた人がやっていたMCでのお客さんとコミュニケーションをとるのは誰がやるかってなった時に、それまで僕はライブでは喋ってなかったんですけど、「だったら僕も喋るよ」って。だから、バンドというのは構成している人が変ったら、中身も変ってしまうということですね。

−そんなメンバーチェンジも経験しつつ、自由なスタンスで19年やってきたわけですが、途中で「このバンドはもう終わりかな?」と思ったことはなかったのですか?

KIBA:終わりってのはないけど、「この先はしんどいかな?」って思ったことは何度かありますね。でも、最終的には「今が楽しいからいいか」ってなるんですよね。極端なことを言うと、バンドをやってて得るお金が欲しいだけだったら、別に他のことをやればいいわけじゃないですか。やっぱり楽しいからやっているわけだし、誰かにやらされてやっているわけじゃないんで、これが楽しくなくなるぐらいにしんどくなった時はヤメようと思う…そこは正直にやった方がいいと思ってるんですよ。でも…例えば、バンドを始めた最初の1年というのは、ほんと食べるものもなかったんですね。バイトもせずにバンドのことばかりやってたし、家賃も半年滞納してるみたいな。ロックな感じでしたよ(笑)。

−バンドしてる人のイメージ通りにお金がなかった?(笑)

KIBA:「あっ、こういうことなんや」ってよく分かりましたね(笑)。あと、自分らでビデオを撮った時もそうだし、普段の自分らがやっている活動にしても、他の人から見ればしどいことをやっているのかもしれないけど、やってる本人にしてみれば苦労と思っていないし、楽しんでるんですよね。当時の貧乏にしても、それはそれで楽しんでいたし、毎日笑ってたような気がする。本人的にやっていることが楽しいか楽しくないか…そういう精神面でバンドが楽しくないと思ったらヤメたらいいと思います。たとえお客さんが5人になってしまっても、自分がやってることが楽しいと思うならやってればいいし…もちろんできることは限られてきますけどね。確実に数字が評価の世界なので、できる活動というのは数字と比例していくから、できることは減っていくでしょうけど、それでも楽しいのならやっていいけばいいしね。

−では、そんなガーゴイルというバンドは自分にとってどんな場所になっていますか? 普通のミュージャンとは違うように感じるのですが。

KIBA:でもね、実はそんなに重く考えてなかったりするんですよ。それこそもっと楽しいものが出てきたら、バンドはヤメてしまうと思う。バンドを始めた頃はこんなに長い間やるとは思っていなかったし、バンドで喰えるとは思ってませんでしたからね。だから、最初の頃は「バンドをヤメたら何するの?」ってよく聞かれましたよ。でも、「ヤメてやりたいことがあるぐらいだったら、もうヤメてるよ」って思ってましたね。僕は元々映画監督になりたかったんで、バンドは学生の間だけのつもりだったんですけど、それは学生の間に自主映画を作りたくなかったからなんですよ。どうせ作るんだったら、ちゃんとした所に入ってから作りたかったんです。だから、青春の1ページでバンドをやるのが悪いとは言わないけど、将来にやりたいことがあるんだったら、1日も早くそれをやった方がいいと思うんです。中には、自分が楽しむことよりもファンに楽しんでもらうためだけにバンドをやっている人もいるだろうし、それはそれで悪いとは思わないですけど、そんな気持ちだけでやっていると、ファンに楽しんでもらえなかった時に、すごく落ち込むと思うんです。「だったら、最初から自分が楽しんでおけば良かった」って後悔してもしきれないというか。やっぱり自分が楽しいと思うポイントだけはなくさない方がいい…それでダメだったとしても、「でも、楽しかったから良かった」って思えますからね。

−ファンのためにやるのって、顔色を窺いながら他人のためにやってる感じですものね。

KIBA:そういうのを観たい人もいるかもしれないけど、僕なら「あの人、すごく楽しそうにやってるよね」というのを観たいですね。ほんとの意味での“ファンのため”というのは、そういうことじゃないかな。「あんなに楽しそうにやってるから、それを観ている私も楽しい」みたいな。だから、僕にとってガーゴイルというのは、自分が生きていく上で、絶対にあった方が楽しいもの…必要な場所ですね。


■GARGOYLE
1987年結成以来、独自のスタンスで活動を続けているロックバンド。そのサウンドはヘビーメタルを基調としながらも和太鼓や三味線が入ったりと、自分たちにしかできないもの創造し続けている。つまり、ジャンルやカテゴリー自体が“ガーゴイル”なのである。かつてメンバーも「職業がガーゴイル」と語っていた。
■OFFICIAL SITE
http://firstcell.net/gargoyle/
 
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