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★横道坊主
★THE STREET BEATS


 「10年ひと昔」という諺がある。別に10年でなくても5年…いや、3年でいい。3年前の自分が現在の自分を想像できただろうか? 3年、短いようでも中高生にとっては入学から卒業までの時間だ。その間に得るものは計り知れないものがあるのは、周知の通り。これが社会に出れば、3年はさらに中身の濃いものとなる。
 今ここに結成20年を迎えた2つのバンドがいる。84年4月に結成された横道坊主(以下、横道)と同年5月に結成されたTHE STREET BEATS(以下、ビーツ)だ。3年という時間ですら、人生に於いてドラマチックな期間だというのに、彼らが刻んできた歴史は20年である。単純に考えても、その年に生まれた赤ちゃんが、今年成人式を迎えているわけだ。そんな時間を彼らはバンド活動に費やした。もちろん20年という年月は物事を順風満帆に運んだりはしない。風が背中を押すときもあれば、逆に押し返すときだってある。しかし、どんな状況にあっても、彼らは自分の力で進んできた。追い風に全てを任せて飛ぶわけでもなく、向かい風に飛ばされるわけでもなく、自分達の意志で1歩、また1歩と踏み出してきたのだ。だからこそ、現在の彼らがあるとも言える。
 さらに『GET TOUGH!』についても触れたい。その組み合わせを聞くだけでも熱い“横道坊主 vs THE STREET BEATS”のバトルライブ。実は彼らの20年のドラマの中で、このライブは重要なポイントで行われていたりする。記念すべき第一回目は93年。リズム隊が脱退してOKIとSEIZIと二人になってしまったビーツが、この日、サポートメンバーを迎えて再始動したのだった。さらに96年の『GET TOUGH!』は、今度は横道がリズム隊の脱退等を乗り越えて動き始めたころで、これからの展開に向けて加速を付ける時期だった。そんな両バンドのターニングポイントに行われ、ある意味お互いが力を貸し合ったイベントなのである。そして、今回。結成20周年という大きな節目を迎えて、『GET TOUGH!』が復活した。ここが新たなターニングポイントとなり、さらなるヒストリーに向けてのスタートに拍車が掛けられることは言うまでもない。

 開演の時を待ち続ける観客達がふかす煙草の煙りで視界にもやが掛かり始めたころ、にわかに客電が落とされた。先にステージに立つのは横道坊主。野太い歓喜の声が彼らを迎えると、場内の期待を一身に受けて今井がギターを掻き鳴らす。そのイントロダクションは「情熱」である。通常のライブなら終盤、しかもラストにプレイされるような曲がオープニングを飾ったということもあって、会場は一気にヒートアップした。『GET TOUGH!』の幕開けに相応しく、初っぱなから横道のど真ん中にある曲がプレイされたとも言え、そのせいか力強く太い音で流麗なフレーズを弾きながらも「ここで受け止めろ!」と言わんばかりに右手の拳を己の心臓に叩き付けていた橋本潤の姿が印象的だった。もちろん、その後も現在の横道を象徴するようなナンバー「輝きもしない明日などいらない」「真夜中の虹」「Happy!」が矢継ぎ早に披露される。
 20年間、紆余曲折はあったものの、バンドとして活動を続けている横道。彼らが歌に込めるものも、その時代の流れの中で変わってきた。長崎出身の彼らの歌の根底には、意識せずとも“戦争”や“平和”というものがある。そこに20年の中で培われてきた、メンバーの人生の重みや痛みが加わったのだ。“夢や愛を信じる”や“とことん楽しんで生きてやる”という意識はもちろん、結成当時に掲げた夢が魂となった今も“俺達の旅は続く”と豪語している。それが20周年の一発目に生まれた曲であり、ライブのラストを飾った「CRAZY HEARTS BLUES」に込められたメッセージでもある。言うまでもなく、ステージ上では誰よりも自分が一番ライブを楽しんでいることを自負し、思い切りプレイしている4人の姿があった。

 続いては、THE STREET BEATSの出番だ。気の早い連中は既に“ビーツ!”コールを繰り返している。そんな熱烈な声援に応えて、まばゆいライトの中に姿を現した4人。そして、横道のライブで熱くなっていた客席をストレートなロックンロール「GO FOR IT!」が切り裂いていく。横道がぶちまけたものがハートフルで温かい空気だとすれば、そこにドライアイスのように冷たく熱い空気を流し込むビーツ。緊張感の高いパンクチューン「THIS IS TOKYO JAP.」「REBEL SONG」を畳掛けるように放ち、場内を徐々に自分達の空間に塗り替えていくのだった。
 圧巻だったのは「ワンダフルライフ」。90年に発表された3rdアルバムに収録されていた曲ではあるが、そこで歌われているものは明らかに“現在”だった。10年の歳月を経て、それは何倍も重みを増している。そんな言葉を胸の奥から剥ぎ取るように歌うOKIのしゃがれた声は、聴く者全ての心を震わせたことだろう。一人のボーカリストが会場を飲み込んだ瞬間でもあった。
 “ガキの頃描いた夢には まだ続きがあるんだ”と叫ぶ「十代の衝動」から後半戦がスタート。さらに「叫ばなければ」「FEELIN' GROOVY」といったアッパーなナンバーで自分達の生き様を、現在を、未来を観客達に突き付け、最後は“生きたいのなら闘え”という現在のビーツの意思表明「拳を握って立つ男」で締めくくった。もちろん客席では、そんなビーツの声に応えるかのように拳が高く、そして勇ましく突き上げられていた。

 アンコールは恒例のメンバー全員によるセッション。「暴発ピストル」「FIGHT FOR YOURSELF」といった両バンドのエキサイティングなナンバーがツインボーカル&ギター、ツインギター、ツインベース、ダブルドラムという超強力な編成でプレイされ、ステージから届く音圧、音の威力、メンバーの気力迫力…その凄まじさは、伝わってくる空気に威圧感を感じるほどものだった。
 そして、オーラスはイベントのタイトルでもあり、横道とビーツの合作「GET TOUGH!」。96年に発表された曲だが、“どこまでも自由に飛べ”や“縛られるものはない”というメッセージは現在もリアルに響いてくる。つまり、当時から彼らは何も変わっていないということだ。約8年の間にはメンバーチェンジやレコード会社の移籍など大きな出来事があった。しかし、今振り返ると、それは彼らにとっては、必要悪でしかなったように思える。8年前の彼らよりも、現在の彼らの方が自由で、タフに思えるし、より輝いて見えるのはそのせいかもしれない。

 結成20周年を迎えた2つのバンドのバトルライブ『GET TOUGH!』。しかし、そこにはいい意味で20年の重みはない。あるのは“現在の自分”を叫び続けている姿と、次に目を向けている意識だけだ。仮に重みがあるとしても、それは20年やってこれたことへの感謝の気持ちと、20年やってきたことへの幸福感だろう。それが形となったのが、まさしくビーツの新曲「LIFE IS A CARNIVAL」である。そんな両バンドの3年先、5年先がどうなっているかは想像できないが、表現者として、ロッカーとして、ステージに立っているということだけは絶対だ。そんな彼らが届けてくれる言葉が一層重みを増していることも断言できる。あと1つ、これは希望的観測も含めて、また『GET TOUGH!』もやってくれることだろう。いや、必ずやってくれるはずだ。

 


PLAY LIST >>>

★横道坊主
01. 情熱
02. 輝きもしない明日などいらない
-MC-
03. 真夜中の虹
04. Happy!
MC
05. 愚連
06. 息衝く・・・
07. 解放 −自由の歌−
-MC-
08. CROWS
09. がむしゃらのブルース
10. ミサイル
11. CRAZY HEARTSBLUES

★THE STREET BEATS
01.GO FOR IT!
02.THIS IS TOKYO JAP.
03.REBEL SONG
-MC-
04.LIFE IS A CARNIVAL(新曲)
05.マニフェスト
06.LONESOME RAMBLE BOY
07.明日なき迷子達
08.ワンダフルライフ
-MC-
09.十代の衝動
10.叫ばなければ
11.FEELIN' GROOVY
-MC-
12.拳を握って立つ男

encore
01. 暴発ピストル
02. FIGHT FOR YOURSELF
03. Love is over
04. INNOCENT DAYS
05. GET TOUGH!



オフィシャルサイト

★横道坊主

http://www.alpha-net.ne.jp/users2/ginjirou/

★THE STREET BEATS
http://www.thestreetbeats.com/

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