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信念を貫いた感じはありますね
自分の気持ちに妥協しなかった



−デビュー20周年のセルフカーバー『THE HEARTS』(00年)や洋楽のカバー『SOULS』(01年)があって、02年に『ある愛の詩』がリリースされるわけですが、ここで歌声が変わりましたよね。すごくやさしくて、温か味と力強さが増して…

山下:そう感じる?(笑) やっぱりお母さんになったからだと思うよ。女の人はすごいというか…今まで気付かなかった自分自身のことに気付いたからね。「歌ってこんなに気持ちいいんだ」というのを、ちょうどお腹の中にあかねちゃんとひかるちゃんがいた時期にすごく感じた。それは、ものすごく動物的にね。だから、「まだ唄っていきたい」とか「まだこれからだ」とか思ったし、ここからセカンドステージが始まるみたいな感覚はありましたね。唄っていくことにすごくリアリティーを感じたというか。

−再デビューという感じですよね。

山下:ほんと、デビューしたい気持ちでしたよ。新人になりたいって(笑)。欲なのかもしれないけど、フレッシュでいたいというか、新鮮な感じでいたかった。

−そして、次に発表されたのがミニアルバム三部作。よしもとばななさんとの『歌う女 歌わない女』(03年)、篠田節子さんとの『壁のない世界』(04年)、唯川恵さんとの『ちっぽけなすべて』(04年)という作家さんとのコラボレート作品を発表したわけですが、これもチャレンジだったのですか。

山下:小説を書き下ろしてもらって、そこからヒントを得るっていうふうにリンクしながら歌詞を書こうと決めて、この三部作は作ったんですよ。曲ありきで歌詞を書いていた時代が長かったので、歌詞ありきの曲作りをやってみようと思った時に、作家の人とのコラボレートはすごい力になるだろうなと思って。「やったことのないことをやりたい!」という感じでしたね。

−それだけ言葉が大事に思えた時期なのかなとも思ったのですが。

山下:そんな気持ちもありましたね。言葉に対する責任感みたいなものが、20代の頃とかとは違ってきたというか。唄う時の感じ方とかも随分変ってきたから、そういうものを形にしたみたいなね。詩として読める歌詞…詩と歌詞は全然違うものだけど、読んでもちゃんと伝わる歌詞を書きたいと思ってた。

−その歌詞なのですが、今まで以上に身近なことをテーマにしている印象がありました。

山下:普遍的な愛がテーマになっているんだけど、もっと日常にあること…ふと気付いた時に、当たり前のことなんだけどとても大事なことなんだって思うような、普通の生活の中にある気持ちを書きたかったんですよね。だから、この三部作で歌詞を書いたことはとても勉強になった。

−昨年はデビュー25周年で、それを記念して作られたアルバムが『Duets』だったわけですが、どんな作品を作ろうとしたのですか。

山下:三部作は作り終わったら、そこで完結してしまうから、またやんちゃをやりたくなったんですよね。やっぱり、いい曲を唄いたくなった。それが『Duets』でカバーをしたことにつながるんですよ。シンプルなコード進行で、メロディーは1回聴いたら忘れられなくて、イントロの部分で持っていかれる曲。そういう曲をカバーしたんだけどね。

−その『Duets』はいろいろなアーティストとデュエットしているので、25周年を祝ったパーティー感覚で作ったという感じですか。

山下:うん、みんな「25周年おめでとう!」という気持ちで参加してくれた。みんなすごかったね。生で(甲本)ヒロトくんの「ドレミの歌」を聴いた瞬間に「本物だ〜」と思ったし…それは清志郎さんもそうだし、改めて生で聴くと本物だと思える人しかいない。だから、挑発も触発もされたし、相乗効果もあって、一人では絶対に生まれないものができましたね。すごく刺激的だったし、ドキドキした。そういう気持ちになりたかったので、夢が叶った。自分がイメージしていた通りのものができて、大成功でしたね。

−中でも興味深かったのはボイストレーナーだった亀渕さんとのデュエットでした。やはり、スタートラインを再確認しました?

山下:そうですね。私にとって恩師である友香さんと唄うというのは、25年間やってきたというか、存在していたことの証のような気がする。感動ものでしたね。「生きてて良かったね〜」って抱き合うみたいな(笑)。

−では、この25年はどんな25年でしたか。

山下:信念を貫いた感じはありますね。自分の気持ちに妥協しなかった…できない。16歳で家を飛び出した時からそうだったんだけど、道が二股に分かれていた時に他人が選ぶんじゃなくて、自分で選んできた。で、それが間違いだったとしても間違いじゃないみたいな(笑)。だから、絶対に自分のひらめきは大事にした方がいいって思いますね。

−「赤道小町ドキッ」がヒットした時もシングル主義にならずに、アルバム主義になってロックを突き詰めたからこそ、今の久美子さんがあるんでしょうね。

山下:そうだろうね。ベースがすごすぎてリズムがよく分らないようなアルバムを作ってしまったんだけど(笑)、それを作ったことで次が見えたわけだし…やっぱり自分で納得できるような展開じゃないと嫌だったんだよね。頭でいろいろ考えるんじゃなくて…魂は脳にあるのかなとも思うんだけど、まず感覚的に「良し」と思うことが大事というか。

−25年の間に歌うのをヤメようと思うことはなかったのですか。

山下:「ヤメようかな?」と思うことは何回もありましたよ。でも、ヤメてしまうと何があるんだろうって。何も思い付かないし、見つからないし、歌が好きなんだからヤメる必要性がない。でもね、ビジネスとして捉えて考えると「もっと頑張んなきゃ!」と思う。それこそ子供たちがいて、世界の中心がここにあるみたいになっているから…ほんとに叫んでるからね。「早くしないさい!」って(笑)。今はそれが大切なのね。だから、そこを守るという私の役目を果たしながら、「歌が好きだ」という気持ちを大切にして唄っていきたいと思ってます。

−自分にとっての歌の在り方も変りました?

山下:より凛と立っていたいと思うようになった。その瞬間瞬間をしっかり感じ取る…その瞬間に身を投じて、どれだけ素の状態で輝けるか。そういう意味では、自分が思う自分でいたいということに関しては、より執着心が強くなっているかもしれない。ここまできたらもう自分に嘘もつけないしね(笑)。“自分らしさ”って何だろうとは思うけど、“自分らしく”いるぞみたいな。




■NEW RELEASE
  25th Anniversary Album
『Duets』
東芝EMI
3,059円
2005年12月21日
     
■OFFICIAL SITE 
http://www.toshiba-emi.co.jp/yamashita/
   
 
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