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布袋寅泰
『HOTEI ROCK THE FUTURE 2002 "SCORPIO RISING TOUR"』
2002.12.21 大阪フェスティバルホール


 ここ最近の音楽シーンを見渡すとヒップホップやグルービーなR&B、メロディックなパンクロックばかりが目につき、オールドスタイルのロックンロールはもちろん、ロックをベースにしたものまでもがダサいものように見えてくる。こうやって音楽も淘汰されていくのだろうか? しかし、そのダサいロックを真剣にやっているミュージシャンは少なくない。布袋寅泰は、その筆頭だと言える。特に今回のツアーはタイトルに『ROCK THE FUTURE』というフレーズがあるほど、いい意味でロックに固執していた。ベーシストに盟友である松井常松、ギタリストにはロックンロール系のバンドを渡り歩いている渡部充一を起用していることでも、今回はロックサウンドを念頭に置いていることがうかがえる。

 1曲目の「SCORPIO RISING」からロックスターは吠えていた。“ロッカー”でも“ミュージシャン”でもなく、まぎれもなく“ロックスター”として。銀のスーツに身を包み、気取ったロック・エンターティナーを演じる布袋。さらにド派手な照明が彼をもり立てる。まさにロックスターのステージだが、どこか往年のロックスターのそれを彷彿させるものがある。それだけに一歩間違えるとダサいコンサートになるのだが、当然のことながらその中で布袋は最高のエンターテインメントを見せつけてくれる。最高のバンドサウンドと、華麗なギターテク、そして圧倒的な存在感。

 また、場内を沸かせる「スリル」や「POISON」、「バンビーナ」、「SUPERSONIC GENERATION」などのヒットナンバーやロックチューン達も布袋ならではのロックだった。古き良き時代のロックに最新鋭の感性を注入し、またはデジタルを多用した最新のサウンドに古き良き時代のロックの手法を織り交ぜ、それでいてメロディーはフックがあるという構造の絶妙さを感じないわけにはいかない。

 今さらサウンドメーカーであり、メロディーメーカーであることの布袋の才覚をどうこう言うつもりはないが、この大胆なロックサウンドは緻密に調合された産物だからこそ、例え故意に“ダサいロック”を演じたとしても、布袋は最高のロックスターになり得るのだろう。つまりポピュラリティーを意識して作られているメジャー感のある楽曲であっても、そのベースには常に泥臭いロックンロールがあるということだ。今回のツアーでは、特にその部分が強調されていたから、ダイレクトに布袋のロックスピリッツに触れることができた。

 3時間たっぷりのエキサイティングなロックエンターテインメント。その終演後にステージに“R&R NEVER DIE”と“ROCK THE FUTURE”の言葉が現れたのだが、いつも以上にロック色の強いナンバーをプレイしていた布袋の立ち姿を見て、きっと誰もが布袋が何を言わんとしていたかがすでに分かっていたはずだ。「ロックは楽しくて、カッコ良くて、ハッピーなもの」ということを再認識させられるライブだった。(石)

 

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